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森の石松

一、

花は橘 男は度胸

粋な単嘩で風切る男

酒と喧嘩はめっぽう強い

ひとつおまけにお人が良くて

乗りの良いのはハンパじゃないよ

森の石松その一席を

ちょいとつまんで読み上げまするが

オーイサネー


二、

清水一家でその名も尊い

森の石松その物語

日にち毎日さいころ渡世

やくざ稼業で股旅者で

五十三次東海道に

富士の高嶺と勢い比べ

清水港の次郎長こそは


三、

子分子方の数ある中に

森の石松一番可愛い

ある日次郎長 石松呼んで

思い出せば七年以前

尾張亀崎 悪代官と

二足わらじの保下田の久兵衛

恨み重なる仕返しすれば


四、

腰の業物 伊達には持たぬ

先祖伝来五字忠吉と

金す奉納 金五拾両

神に誓いし金毘羅様よ

どうかご利益あらわし給い

首尾をよろしく打ち晴らしたる

お礼参りは忘れはしない


五、

これさ石松お前に頼む

俺に代わって四国の讃岐

行って帰って三百十里

無事に帰れば一家を持たす

さすが清水の大親分よ

されば石松 旅路の仕度

身をば清めて 蛇形の単衣

父の無い子は手てなし子じゃと


六、

紺の角帯しっかと締めて

千草色なる半もも引きに

脚絆腹掛 身軽な仕度

腰に差したは新刀なれど

鬼神丸とて切れるが自慢

二十八人代貸元で

腕と度胸のめっかち男

七、

玉に傷だよ 石松さんは

何の因果か お酒が好きで

呑まぬ時なら お人も良いが

虎になったら 喧嘩が早い

これが親分 次郎長の苦労

これさ石松 道中だけは

笹の露ほど 呑まずに頼む


八、

胸に答えて、勇んで出でる

役目果たした 石松さんは

丸に金の字 お礼を背負い

急ぐ旅路で あらねば途中

名所見物 乗合舟で

淀の川瀬は 三十石の

瀬田の唐橋 舟をば降りる


九、

そこで評判 江州の草津

身受山なる 鎌太郎どんに

わらじ脱いでの 股旅仁義

年はゆかねど 利口な男

明日はお立ちか お名残り惜しや

今は世に無き 清水の姐御

これは誠に恥ずかしながら


十、

ご仏前にと お供え頼む

言って包んだ 香典百両

派手な付き合い 売り出し男

別に包んで 石松さんへ

わらじ銭だよ 笑っておくれ

遠州浜松 広いようで狭い

森の石松 道中姿


十一、

遠州河原で 一服やれば

丁度であった やくざの仲間

都鳥とて 二代目吉兵衛

久しぶりだな 石松さんよ

少し遊んで いったらどうか

それもよかろと 調子に乗って

酒の肴に 香典話だ

オーイサネー 

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